【乳房再建の現状と細胞治療の可能性】
乳がん治療手術で患部を摘出することで命は助かっても、手術後に乳房が変形し、喪失感や日常生活の不都合から再建手術を希望する方が大勢います。そのため、乳房再建手術には、患者たちの乳房が返ってくることにより得られる身体や心の『生活の質(QOL:Quality of Life)』を高める大きな意義があります。乳房温存手術による小さなへこみに対して脂肪注入法が注目されていますが、吸引した脂肪を単純に注入するという従来の方法では生着率が低く、硬くなってしこりが残りやすいという課題がありました。
しかし、近年では脂肪と幹細胞を混合して注入することで生着率が高くなることが分かってきており、新しく大きな傷を作らずに 自然で柔らかい乳房の再建ができ、これまでに補い切れなかった細やかな再建手術が行われています。
【現在、治療や動物による研究が行われている機関】
◆ 鳥取大学 ◆ 関西医科大学
20 歳以上の女性で乳房温存手術から1 年以上経過し、乳がんの再発や転移のない、乳房の変形によってQOL が損なわれている患者5 名を対象に、患者本人の脂肪組織から採取された幹細胞(脂肪組織由来幹細胞)を移植する乳房再建の臨床研究が行われました。臨床研究では、拒絶反応や感染症、がん化は認められず、安全性も確認されています。また、石灰化がなく再建し、治療した患者の QOL の改善と向上を図ることができたと報告されています。
※ 幹細胞に関する様々な情報は、ヒト幹細胞情報化推進事業(SKIP:https://www.skip.med.keio.ac.jp/)や 日本再生医療学会雑誌、各大学や施設の論文及び記事などを参照しております。