【肝疾患の現状と細胞治療の可能性】
肝疾患には肝炎や肝硬変と呼ばれる病気があります。現在においても肝炎ウイルスなどによる肝炎、肝硬変罹患者は未だに増え続けており、毎年大勢の患者が亡くなっています。さらに、根本的治療法が現在は肝臓移植しか無いため、ドナー不足や拒絶反応の問題などにより治療自体を受けることができない患者が多くいます。そこで最近では自家幹細胞投与による治療法が注目されており、肝硬変で硬く変質した肝臓が幹細胞移植によって柔らかい肝臓に修復されるだけでなく、自家幹細胞を使うことでドナー不足や拒絶反応の問題も回避できると期待されています。
【現在、治療や動物による研究が行われている機関】
◆ 山口大学(骨髄由来) ◆ 九州大学
【山口大学の症例】
非代償性肝硬変で内科的治療法では改善が見込めない患者を対象に、患者本人の骨髄から採取した幹細胞を増殖させて、末梢静脈から点滴投与することで、肝硬変の状態の改善と肝機能の回復を試みる臨床研究が行われました。
これまでの動物実験から、この治療を施すと肝硬変の原因となっている隔壁を構成する線維が減少して、肝硬変の状態が改善し肝機能も回復することが確認されています。研究チームは、局所麻酔下で肝硬変の患者本人の骨髄から骨髄液を採取し、それを体外で約 3週間培養して骨髄間葉系幹細胞を含んだ細胞群を増やし、その細胞懸濁液を腕などの血管(末梢静脈)から通常の点滴と同様に投与を行いました。この臨床研究においても、肝硬変の状態が改善し肝機能も回復することが期待されています。
※ 幹細胞に関する様々な情報は、ヒト幹細胞情報化推進事業(SKIP:https://www.skip.med.keio.ac.jp/)や 日本再生医療学会雑誌、各大学や施設の論文及び記事などを参照しております。